定期保険等の税務取扱に関するお知らせ

2019年6月、国税庁は「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)を一部改正しました。
改正内容や改正後の経理処理法などをお知らせします。

なお、本改正は、契約日が2019年7月8日以後の契約にかかる保険料について適用されます。
※契約日が2019年7月7日以前の契約には遡及して適用されず、従来の税務取扱が適用されます。

1,税務取扱見直しの内容

(1)対象となる保険商品

以下に該当する場合には、新たな税務取扱が適用されます。

  • 契約形態 : 法人契約(被保険者が役員または従業員)、個人事業主契約(被保険者が従業員)
  • 保険期間 : 3年以上
  • 保険種類 : 定期保険、第三分野保険

上記かつ、支払保険料が給与とならないもの(受取人が法人の契約など)

(2)適用時期

契約日が2019年7月8日以後の契約にかかる保険料について適用されます。
※契約日が2019年7月7日以前の契約には遡及して適用されず、従来の税務取扱が適用されます。

(3)見直しの内容

最高解約返戻率に応じて、経理処理の取扱が以下の通りとなります。

【最高解約返戻率】         【経理処理の取扱】
50%以下の場合          契約年齢や保険期間の長さによらず、全額損金算入可能です。
(解約返戻金がない契約を含む)
50%超85%以下の場合       別途記載

85%超の場合           別途記載

2,税務取扱見直し後の経理処理方法

(A)最高解約返戻率が50%超85%以下の場合

①最高解約返戻率が50%超70%以下の場合
・資産計上期間(保険期間の当初4割期間)は保険料の「4割を資産計上し、6割を損金算入」します。
・保険期間の当初7.5割期間経過後から「資産計上額を取り崩し」します。
・資産計上期間と取り崩し期間の間は、保険料の全額を損金算入します(資産計上額の取り崩しはありません)。

※被保険者一人あたりの年換算保険料相当額(保険期間中の保険料の総額÷保険期間の年数)が30万円以下で
あれば、一定の要件のもと全期間を通じて全額を損金算入することが可能です。

②最高解約返戻率が70%超85%以下の場合
・資産計上期間(保険期間の当初4割期間)は保険料の「6割を資産計上し、4割を損金算入」します。
・保険期間の当初7.5割期間経過後から「資産計上額を取り崩し」します。
・資産計上期間と取り崩し期間の間は、保険料の全額を損金算入します(資産計上額の取り崩しはありません)。

(B)最高解約返戻率が85%超の場合

・保険期間の当初10年間は保険料の「最高解約返戻率☓9割」、それ以降は保険料の「最高解約返戻率☓7割」を
資産計上します(当期分支払保険料の額に相当する額が限度となります)。
・解約払戻金額が最も高くなる時期から「資産計上額を取り崩し」します。
・資産計上期間と取り崩し期間の間は、全額損金算入します(資産計上の取り崩しはありません)。

※「最高解約返戻率が85%超の場合」の資産計上期間
→「最高解約返戻率が到来する時期」または「年間の解約払戻金の増加額が年換算保険料相当額に対して
70%以下になる時期」のいずれか遅い方となります。

法人向け保険商品のご検討に際してご留意いただきたいこと

(法人向け保険商品の加入にあたっては、以下の点を確認の上でお申し込みください。)

  • 法人向け保険は、被保険者様に万一のことがあった場合、(死亡)保険金等を事業保障資金等の財源としてご活用いただくための、「保障」等を目的とする商品です。
  • 「支払い保険料」を損金算入しても、「保険金」や「解約返戻金」等は益金に算入されます。課税タイミングが変わる課税の繰延べに過ぎず、原則節税効果はありません。
  • 保険本来の趣旨を逸脱する保険加入、例えば、「保険料の損金算入による法人税額の圧縮」のみを目的とする保険加入はお勧めしておりません。

 

今回、税務取扱の一部改正をお伝えしましたが、元来より保険の税務については「加入時損金計上」なら「受取時資産計上」、「加入時資産計上」なら「受取時損金計上」となっており、節税では無く単なる税の繰延効果だけであったため、今回の改正が事業上保険の必要性を失うものではありません。

従来通り、万一の際の保障を確保しつつ、かつ計画的な退職金の準備などを行う際には依然として大きなメリットがあります。今後も中小企業様の多様なニーズにお応えして参りますので、ご検討の際には弊社担当者までご相談ください。

注)税務の取扱等については、2019年7月現在の税制・関係法令等に基づき記載しております。今後税務の取扱等が変わる場合もございます。

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